2018.02.26

メイキング オブ『クマエキシビション2018』

クマ財団第1期生による作品展覧会『KUMA EXHIBITION 2018』が、表参道の複合文化施設SPIRALで2018年3月24日、25日に開催されます。2,740名の応募者の中から選ばれた50名がそれぞれの才能を発信し、その可能性をプレゼンテーションする予定ですが、本記事を執筆している2月時点で、彼らの作品はひとつとして完成していません。

そんな “多ジャンル集合型展覧会” をサポートしているのがPARCOエンタテインメント事業部のプロデューサーである小林大介氏と、日本科学未来館での演出ディレクターをはじめ会場デザインを数多く手がけてきた遠藤治郎氏です。

50名の学生クリエイター全員と向き合い、試行錯誤してきたプロセスを振り返り、小林氏と遠藤氏が語ったこととは? 『KUMA EXHIBITION 2018』に行くと、どんなことが起こるのか? 気になることをお聞きしてきました。

通常の展示ディレクションではない
“多ジャンル複合型展覧会”

― お二人は長年にわたり、様々なフェスティバルやエキシビションに携わられてきたとお聞きしていますが、一緒に仕事をされるようになったのはいつ頃なのでしょうか。

小林 6年くらい前でしょうか。まだ遠藤さんがタイに住まわれていたときだったんですが、はじめは知人の紹介で、都内でお茶をしました。それからすぐ「タイの野外音楽フェスティバルに、PARCOの商品を持ってきたら楽しいよ! ぜひ!」と誘われて、行ったんですよ。すると、こういうものが会場に建っていたんです。

 

遠藤 旧渋谷PARCO(2019年秋リニューアルOPEN予定)をディフォルメスケールで再現した、“なんちゃってPARCO”です。フェス会場の中心部にSHIBUYAという名前をつけて建てました(笑)。

小林 タイの山奥にPARCOが出現しているのを見て、さすがに驚きましたけど、同時に感動したんです。面白いことを考える人がいるものだな、と。日本ではなかなか実現できないようなことですが、一緒に仕事をしたいと思いました。それ以来、さまざまなイベントでお仕事(建築や照明、デザインなど)をお願いしています。最近では渋谷スペイン坂にギャラリーXの設計ディレクションがあります。

 

― そして今回はクマ財団のエキシビションでタッグを組まれたわけですね。

小林 PARCOが他社さんのイベントをプロデュースするのはイレギュラーなことなんですが、今回はインキュベーション(若手クリエイター支援)という形で、特別に協力させていただくことになりました。遠藤さんとタッグを組んだのは、いくつか乗り越えなければならない難題があって(笑)、かつ学生さんと深く関わる案件だからですね。

遠藤 小林さんからは “難しい × 面白い話” がやってきやすいんですよね(笑)。タイでは建築を大学でずっと教えていましたし、卒業制作展やイベントの仕事もたくさんやってきていますので、困ることはないんですが……この “多ジャンル集合型展覧会” はちょっと特殊で、形にするのが簡単ではないなと感じています。

小林 そもそも作品が完成していない状態で準備をしていますから、通常の展示ディレクションじゃないですよね。大きなガイドライン、フレームの部分はこちらで考えて提示しましたけど、全員がそれにフィットしたものを作れるわけじゃない。

遠藤 私たちの仕事は1期生の全員インタビューから始まりました。学生クリエイター50人と会って、「エキシビションで、なにを展示したいの?」の前に「なぜこれを造りたいの?」といった根源的な問いから展示内容のアイディアやソリューションを提案してきました。

小林 展示の仕事というより、教育プログラムの最終章を一緒にやっているような感じですね。

遠藤 大学でやっていることに近いと思います。ただ、持っている武器も戦うフィールドも異なるため、全員の言葉が違うのはいわゆる学校と違うところですよね。

 

― “全員の言葉が違う”とはどういうことでしょうか?

遠藤 年代は同じ(25歳以下の学生)でも、取り組んでいることが違うので、まさにバベルの塔みたいなんです。美大でファインアートをやっている学生と、理系でプログラミングをしている学生、映像系や音楽系……と系内で使っている言語が違うので、同じ奨学生同士でも系が遠いとロスト・イン・トランスレーション状態に。ある学生が、「エキシビションが終わる頃には言葉が通じ合うといいね」と言っていたのは印象的でした。

小林 それがクマ財団の面白さですよね。いろんなものがミックスしてできているカルチャーというのはこれまでにもあったと思いますけど、現代流に言うと、ハッカソンに近いのかなと思います。異業種の人とまとめて交流できる場所になっている。

遠藤 ジャンルをクロスオーバーしているコミュニティは常にあると思いますけど、50人でエキシビションの形にするのは珍しいと思いますね。

小林 クリエイターは独自性で突き抜けていくのが一番の命題ですけど、クマ財団では付録として、予期せぬいろんな隣人、多様性と接続する機会を得られたと思うんです。それはエキシビションが終わってからも、みなさんの財産であり続けると思います。

 

― 表参道の複合文化施設 SPIRAL(以下、スパイラル)で実施することについて、どんな印象を持たれましたか。

小林 そこで開催すること自体がかっこいいなと思いました。クリエイティブの財団として、建物そのものの価値が高いところを選択しているんだなと。

遠藤 スパイラルは槇文彦さんが設計されていて、建物と街の境界を少しでも溶かそうとしている、つまり【街(パブリック)を建物(プライベート)に引き込んでいる建築】なんですね。だから公益財団のエキシビションの会場としてとてもマッチングしていると思いました。

― 先ほど、この展示には “難題” があるとお話しされていましたが、それはこの特殊な形をした会場ならではの問題なのでしょうか。

遠藤 スパイラルに限らず、どこの会場でも制約はあるわけで、それは問題とは捉えていません。たとえばスパイラルの場合、パブリックとプライベートの相貫性が多い空間なので、まずはそこをどう活かすかということを考えましたが、私たちが悩んだのは、あくまで多ジャンルの作品をどう構成するかということです。

小林 クマ財団の文脈をまったく知らずにやってこられた方が「いろんなものがありすぎてわからない」とならないようにする必要はありますよね。

遠藤 当初は思想・経済・技術といったゾーニングで展示しようと思っていましたが、ある程度わかりやすく、映像系、美術系、クラフト系、IT系……と、エリアをゆるやかに分けつつも、隣り合うそれぞれの作品に潜む多糸的なコンテクストが現れるようにしています。都市的で、街を歩いて出会う風景になるように。つまり一見無秩序なようでいてそこには相似、対照、背反といった多様な関係性が、ある全体感になっていれば楽しいかなあと。平たく言えば市場(マーケット)でしょうかね。

小林 もともとこのエキシビションのテーマが【来場者の方が、単純に藝術作品を鑑賞するというよりは、世界に通用するクリエイターを羽ばたかせる機会】というものでしたので、このいわばクリエーションのマーケットシティーで来場者の方には、なにか未来に機能する可能性を感じていただけるといいなと思っています。

遠藤 「これヤバイね」という可能性を信じて帰ってもらえる感じがいいですよね。若い才能がいっぱいあること自体がワクワクすることだから、それを空間化して、都市の一部になったらいい。だから来場者のターゲット層はとても広いんです。

小林 受け手によって機能の仕方が違うだけで、誰にでも開かれているエキシビションだと思います。企業の方には事業展開の可能性が見えるかもしれませんし、同世代の方にはプラスアルファのアイディアを及ぼすかもしれないし、偶然立ち寄った方には「綺麗だな」と感じていただくだけでももちろんいい。

― 50名分の多ジャンルの作品があるわけですから、どんなことが起こるかちょっと想像できませんね。

遠藤 難しいことも多いですけど、やっぱり面白い仕事でしたよ。みんな自分の表現方法をしなやかに考えていて、作るだけでなくコミュニケーションに長けている人もいて、今っぽいなと思いました。

小林 現代はソーシャルコンタクトに強くて、コミュニケーションで物事を推進できる力があることも武器になりますよね。それと、全員奇人なんですけど、わりと普通に見えるという感想を持ちました。掘っていくとオリジナリティがある方たちなんですが、それが現代ってことなのかな。すごく都会的で、ソフィストケートされていていますね。

遠藤 来場者の方に50人の作品がしっかり届くようにするのはもちろん、よりいい体験をしていただけるエキシビションになるように、さまざまな方面からアシストしていきたいですね。

小林 展示としてのエンタメ性も色々考えていますので、ぜひ多くの方にご来場いただきたいと思っています。

― 会場でどんなことが起こるか、楽しみにしています。今日はありがとうございました!