インタビュー

頭の中で小説を書いて、それを歌にする短編小説のような曲作り。〜4期生インタビュー Vol.15 尾崎リノさん〜

クマ財団が支援する学生クリエイターたち。
彼らはどんなコンセプトやメッセージを持って創作活動に打ち込んでいるのか。
今という時代に新たな表現でアプローチする彼らの想いをお届けします。

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4期生41名のインタビュー、始めます!

尾崎リノ

1999年千葉県生まれ。日本大学芸術学部 放送学科在学。
東京で活動するシンガーソングライター。

2017年11月30日よりライブ活動を開始。
2018年10月に1stミニアルバム『NITE』をリリース。
2019年5月に『文学のすゝめ』(CD+短編集)をリリース。
2020年11月に2ndミニアルバム『ぜいたくをしようよ.EP』をリリース。

音楽の他に自作の小説や詩集も手がける。
ツインヴォーカルのバンド「Cody.Lee(李)」でも活動中。

OFFICIALSITE:http://ozakirino.net/

https://kuma-foundation.org/student/rino-ozaki/

 

 

楽しくてライブを演りまくってきたおかげで、今がある

 

――文学とフォークを掛け合わせたような独自のスタイルで音楽活動をされていますが、自分ではどんなジャンルを意識していますか?

 

尾崎 フォークは好きなんですけど、私としては自分の音楽が何かのジャンルに属しているとは思ってないです。そのときハマっていた音楽からインスピレーションを受けて一曲一曲作ってきた感じで、たとえば一番再生回数が多い「部屋と地球儀」という曲を書いたときは、ラップグループのMOROHAにハマっていて、私もこういう感じでやってみようと思ったんですよね。それで同じコードをずっと弾いて、そこに語り口調の歌を乗せていく曲ができたんです。

 

――シンガーソングライターとして自分の曲を歌うようになった原点を教えてください。

 

尾崎 高校で軽音楽部に入っていたんです。その頃はコピーバンドをやっていて、曲は遊びで作る程度でした。それから日芸の放送学科に入ったんですけど、学園祭でラジオをやることになって、歌ってほしいと頼まれたんです。そのラジオで共演した人がシンガーソングライターをしていて、その人の活動を通して「こういうライブハウスで歌うものなんだ」と知ったんです。それで自分から連絡して下北沢のMOSAiCに出演が決まったんですけど、高校生のときに作った曲が2曲しかなかった。出演時間が25分と言われて、じゃあ新たに作るしかないと(笑)。ライブのために曲作りを始めたのがきっかけでしたね。

 

――ある意味、すごい度胸ですね(笑)。そこからライブ活動がスタートするわけですが、その後は順調でしたか?

 

尾崎 本当は一回で終わるはずだったんですけど、MOSAiCから次も出てほしいと言われたんです。それからライブハウスに出ることが楽しくなってきて、下北沢や上野のライブハウスに手当り次第、出まくってました。初ライブから半年間くらいは月15本くらい演ってましたね。その後、下北沢のLagunaというライブハウスに初出演したとき、その箱の人がCDの全国流通を誘ってくれて、初ライブの翌年10月には1stミニアルバムを全国流通で出すことができたんです。

 

――活動開始から1年も経たずにミニアルバムを出すなんて、すごいスピード感ですね。

 

尾崎 ひたすらライブが楽しくて演ってるうちに始まっちゃった、みたいな感じでしたね(笑)。最初の頃は、自分がお金を払ってライブをさせてもらっている立ち場で、お客さんのノルマもあったんですけど、ライブを演りまくったおかげでお客さんが一人、二人と増えていって、ミニアルバムを全国流通させたあたりから、私を観るためにライブハウスに足を運んでくれる人が増えていったんです。ライブは観たことがないけど、音楽配信を聴いて私のファンになったという北海道や沖縄の人もいて、めっちゃ嬉しかったですね(笑)。

高円寺にて撮影。

 

――ソロ活動は一人で何でもやらなくてはいけないと思うんですが、セルフプロデュースは、どんなふうに取り組んでいますか?

 

尾崎 1stミニアルバムのときは、全国流通を手伝ってくれた人が形にしてくれて、私がまだ何もわからなかったのもあって、私の意志はあんまり反映されてないんです。だからその点では、納得してない。やっぱり自分でプロデュースをしたいというのがあって、アルバムのジャケットやMVのキャスティングを自分で決めるようになりましたね。

MVは一緒に創ってくれている人と二人で練るんですけど、私がイメージしているモデルを自分で探してきて、たまに私が監督をやったりカメラをやったりもしてます。先日リリースした2ndミニアルバムは、予算という厳しい問題もあって100%納得できてないですけど、カメラマンやモデルも全部、自分で決めていったので、60%くらいは納得できるものができたと思います。

 

 

 

実体験から発想してフィクションを創る詩の世界観

 

――情景が浮かんでくるような歌詞がとても印象的ですが、どんなふうに曲が生まれてくるものなんですか?

 

尾崎 私にとって曲はアウトプットなんです。小説を読んだり、映画を観たり、音楽を聴いて、その感動がそのまま曲に変わる。小説や漫画に直接影響を受けて曲を書くというより、世界観の創り方が影響している感じですね。

歌詞は実体験から発想してフィクションとして創ってます。たとえば「夜中のライブハウスに」の場合は、下北沢で友達と朝まで飲んでいたことがあるんですけど、ベロベロに酔って友達と好きなバンドの曲を大声で歌いながら一番街をめっちゃ走ったことがあって、そのときのエモーショナルな気持ちを、ライブハウスに忍び込むというフィクションにしたものです。「部屋と地球儀」も初めて半同棲をした経験と別れたという実体験が核にあって、そこからフィクションを創るわけですけど、いったん頭の中で小説みたいなものを書くんですよね。そこから詩になりそうな言葉を選んで歌詞にしていく。

 

――頭の中で小説を書く!? 文学的というか、やはり独特の曲作りですね。かなり本の影響があるのでは?

 

尾崎 小さい頃から本の定期便を購読していて、本はずっと読んできたんですけど、私はけっこう乱読なので、この作家に影響を受けたというのは漫画に比べると少ないです。直接的には、短歌から影響を受けていると思いますね。身の回りのちょっとしたことで「言われてみればたしかに」と誰もが共感できるのが短歌のいいところなんですけど、そういう些細なことに気づく力がついたかもしれない。あとは言葉の並べ方や、カタカナにするか平仮名にするかといった言葉のセンス的なものを短歌から学んでいると思います。

 

――歌に直接メッセージ性を込めるタイプと、さりげなく表現するタイプのアーティストがいますが、自分ではどちらのタイプだと思いますか?

 

尾崎 最近まですべての曲にメッセージ性を込めて書こうと思っていたんですけど、今はあんまりメッセージ性を出さずに言葉の聞き馴染みを大切にした曲を書きたいと思いはじめていますね。しいて伝えたいことがあるとしたら、私の中に一貫してある“からっとした虚無感”ですね。私は対人関係が苦手で、びっくりするほど人に興味がない。二人のラブソングを書いておきながら、いざ崖の上で二人きりになったら私は生き残りたい(笑)。曲のイメージから恋愛に対して情熱的なタイプだと思われるかもしれないけど、からっとした人への興味のなさみたいなものが、私の地層の一番下にあるんです。私の曲を聴いてくれている人にはがっかりされるかもしれないけど、それを隠したくもないし、自分に嘘をつきたくもないんですよね。

 

――現在の活動ですが、コロナ禍でライブ活動も厳しい状況が続いているのでは?

 

尾崎 新型コロナが流行りはじめた頃はライブ活動がすべて中止になったんですけど、今はガイドラインを守って20人くらいの範囲で有観客ライブの活動をしていて、コロナ前とライブの回数自体は変わらないです。有観客ライブはあんまりお客さんを入れられないけど、そのぶん配信ライブをやっていて、普段はライブハウスに来ない層のファンが観てくれるので、投げ銭もあってわりと順調です(笑)。

 

――今後はどんなアーティストを目指していますか?

 

尾崎 私は武道館に立ちたいとかテレビに出たいとか、そういう大きな野望がなくて、今の生活でいいんですよね。目標としては、音楽で食べていくことはもちろんだけど、やりたいことをやるために必要なお金に困らないようになることが、今一番目指しているところです。今の生活をこのまま続けて、創作活動をずっと続けていきたい。その結果としてライブにお客さんが来てくれてSOLDしたい。爆売れしたいという望みはないけど、これまで続けてきた中でだんだん自分の曲に自信を持てるようになってきたので、私が好きなものを発信し続けていれば、ファンは付いてくれるだろうって思えるようになってきましたね。

 

――本日はありがとうございました!

尾崎リノさん。高円寺にてインタビュー。

 

 

 

尾崎リノinformation

■2ndミニアルバム『ぜいたくをしようよ.EP』発売中!
2020年11月11日、タワーレコード限定にてリリース! DQC-9054 1800円(税抜)
アルバムの購入はこちらから可能です。

 

■『ぜいたくをしようよ.EP』発売記念インストアイベント開催!
【日時】2020年12月4日(金) 19:00~(優先入場開始18:30~)
【場所】タワーレコード池袋店5F 店内イベントスペース
【内容】ミニライブ&サイン会
タワーレコード池袋店にて 『ぜいたくをしようよ.EP』をご購入いただいたお客様に、先着でミニライブ観覧入場券とサイン会参加券を配布いたします。
【お問合せ先】 タワーレコード池袋店 ☎03-3983-2010

 

 

Text/Photo by 大寺明

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