2021

或る漁港

シンガーソングライター1人としての活動を減らし、今年は新たにサポートバンドを迎え新しい表現を突き詰めようと思っています。
この映像は元々歌っていた私の音源「或る漁港」をバンドver.に編曲し、アコースティックギター1本では表現しきれなかったものをバンドセットで練り直す事で曲の持つ荘厳な雰囲気やスケール感をそのまま生かす事ができるようになりました。

その最初の瞬間をカメラに収めたものです。

2019年5月、元号が平成から令和に変わり、これまでの歴史の一幕が降りて新しい時代にバトンタッチしてゆくそんな瞬間を、まさか自分が生きてるうちに体験できるなんて思っていませんでした。
そんな一生に一度あるかないかのような特別な日であっても、私達の生活は普段と何も変わらずただただ平穏な時間が流れているというか、特に実感もなく過ぎて行ってしまったことが、今まで自分の肌で体感してきた大きい出来事(東日本大震災のような災害)ですら、これから令和に生まれる人にとっては教科書の中の「平成はこんなだった」というたった数行の出来事に過ぎなくなってくるんだろうなと思い切なさを覚えました。
そしてそう思う私の背後にも昭和、大正といくつもの歴史があるはずなのにその実感はどうしても湧かず、自分が生きている現代だけが本当に存在している物のように感じます。

「白旗を振り乗り込んだ船の煤煙に 先人の声を聴いた」

この曲の最後のこのフレーズは、誰も知らないどこかに存在している”或る漁港”を偶然見つけた主人公が停泊している船に乗り込んだ時、船底が傾き舵も錆びついたその船が漁港につながれるまでに見てきた歴史の数々、冒険の片鱗のようなものが主人公の全身に走馬灯のように流れ込み、漁港全体に生温い一陣の風が吹いたような情景をイメージして作詞しました。

一人一人違う”或る漁港”のイメージを予め想像して聴いてくれたら嬉しいです。

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