
2024-25
《カニのハサミ》《窓枠に置かれたサボテン》《はりつけられた紅葉の風景》
色に染まった紙が貼られた彫刻は、彫刻の表面を事物から遠ざけるような、透明性を持っている。事物をかたどる彫刻を、事物からより遠ざけようとすると、事物周辺の存在が気になってくる。赤瀬川原平の「四角形の歴史」という本の中に、黒目とまぶたに縁取られた白目の窓から、小さな人間の顔がこちらを覗いている絵が描かれている。人間は自分の目の余白に気がついて、そこからはじめて風景が見えてきたのではないかと、筆者が考えた場面である。白目に佇む小さな人間は、黒目が焦点を合わせた物ではなく、黒目が見ない余白の部分を必死に見ようとしているのだ。私が今回展示している作品は、彼らからの視線によって、彫刻が持つ焦点を広げようとしたものだったとも言える。
▶▷▶▷グループ展詳細ページ:KUMA experiment 2024-25 vol.6 『夕暮れを待つ星』
©KEITA MOTOOKA


