2026
《∀x(x∉◯⇒x=∅)》
本作は、記号論や唯名論を踏まえ、人間の知覚/認知の危うさや脆弱性を示したものである。私達が対象を認識し、線を引く行為によって初めて、存在は世界へと引き摺り出されて〈無〉から〈有〉となる。しかし、個人の認識の外側にある〈有〉は、この世界において限りなく〈無〉に等しい扱いを受ける。タイトルの数式は、「己の視界(◯)に含まれない全ての要素(x)は空集合(∅)=存在していないも同義である」という排外主義的な思想への問いを表したものだ。私達は規範という実体のない〈正しさ〉に縛られながら、周囲を簡易的な記号へと還元し、本質を理解したつもりになってしまう。しかしその実、そこに本質などはない。自らの脳内に映し出された都合の良い像しか見えていない排他的な構造への疑問を、空間へと再構築する。
【9期生による出展作品】
©AOI SUGITA