インタビュー
ギャルカルチャーをテクノロジーでアップデートするアガる電子工作! 〜4期生インタビューVol.36 ギャル電まおさん〜
クマ財団が支援する学生クリエイターたち。
彼らはどんなコンセプトやメッセージを持って創作活動に打ち込んでいるのか。
今という時代に新たな表現でアプローチする彼らの想いをお届けします。
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4期生41名のインタビュー、始めます!
ギャル電まお
静岡県生まれ、タイ育ち。
静岡大学工学部を経て東京工業大学 大学院 環境・社会理工学院に在籍。
ドンキでArduinoが買える時代を夢見て、2016年に電子工作ギャルユニット「ギャル電」を結成。
ギャルによるギャルのためのテクノロジーを提案し、ギャルがアガる電子工作アイテムを制作。
いつか渋谷に電子工作ブームを巻き起こすべく、大学院ではDIY電子工作カルチャーをリアルストリートに広める研究をしている。
https://kuma-foundation.org/student/mao-galden/
盛れてる電子工作を作って、パーティーに遊びに行こう!
――「ギャル×電子工作」とは異色の組み合わせですね。しかし、今はギャルカルチャーが盛り上がっている感じでもないし、電子工作好きの女性も珍しいですよね。それぞれの原点を教えてください。
まお 私は静岡の出身なんですけど、9歳から高校卒業までタイで育ったんですね。プーケットというリゾート地に住んでたんですけど、思春期から日本のギャルファッションが好きになって、タイ語版の『Popteen』を買ったり、日本に帰国する際は大量のギャル雑誌を買って帰って舐めるように読んだりしていて、プーケットで一人でギャルをやってました。
いつか渋谷でギャルをやりたいと思って、大学でがんばって日本に来たんですけど、その頃にはギャルカルチャーそのものが下火になっていて、アイドル文化が主流になってたんですよ。もう終わってんの!?って自分が想像していた渋谷とのギャップにがっかりしたんですよね。それがギャル電の“ギャル”の部分の原点ですね。
――日本の大学ではどんな学部に入ったんですか?
まお 静岡大学の工学部に留学したんですけど、ロボットコンテストの授業に参加するうちに、電子工作楽しい!と思うようになってロボット作りのサークルに入ったんです。でも、ロボットはかわいいんだけど、自分的に何か足りない。そのとき“アゲみ”が足りないと思ったんですよ。それで「アガる電子工作ってなんだろう?」と自分なりに模索して辿り着いたのが、海外の電子工作ブログでした。
海外の電子工作をやってる人たちは、何かのカルチャーに精通している人が、それをよりかっこよく表現するために電子工作という方法を使っていて、たとえばスケーターがスケートボードを光らせたり、音楽好きの人がシンセサイザーを自作したりしているんですね。材料の型番も全部書いてあって、コードをコピペしてコンパイルすればそのまま動くみたいな記事がいっぱいあって、ヤベえ、楽しい!となって、自分でも作るようになったんです。
――まおさんの場合、ギャルカルチャーを電子工作で表現しようとなったわけですか。
まお そうですね。もともとプーケットというパーティーピープルが集まる場所で育ったので、盛れてる電子工作を作ってクラブに遊びに行こう!という発想でしたね。友達を巻き込んで光るスカートやトップスを作ろうとなって、夜7時くらいに渋谷のシェアハウスに集まるんだけど、当時はまだ電子工作が上手くなかったから作るのに時間がかかって、結局、完成するのが朝になって、これじゃクラブ行けないじゃん、みたいなことがよくありましたね(笑)。
その頃、IT企業にインターンしていて、「電子工作の記事を書いてよ」と言われたのがきっかけで、自分で作っていた光る電子工作アイテムの記事やブログを書き始めたんですよね。
――電子工作ギャルユニット「ギャル電」結成の経緯は?
まお 私と同じくパーティーで目立つ電子工作を作っていたギャル電きょうこさんを知人から紹介されて、会ってすぐに意気投合しましたね。ちょうどインターン先の会社が主催するIoT LTイベントがあったので、そこでギャル電というユニットでプレゼンしたのが始まりでした。最初はハロウィンで一番目立つ電子工作を作ろう!というノリで、作る楽しさを共有したり、一緒にLTのイベントに参加する感じでしたね。
――まおさんだけでも相当レアなのに、同じような趣味嗜好の人がもう一人いたとは!
まお すごい不思議でしたね。でも逆に、二人しかいないのかな?と思って、もっといていいんじゃないかと思いました。それで今は、ギャル電を増やすことを目標に電子工作を広める活動をしてます。コンセプトとしては、「ギャルによるギャルのためのテクノロジーを提案するユニット」と説明していて、本気で渋谷のドンキでArduinoが買える時代を夢見てます(笑)。電子工作をやったことがない人からすると、電子工作は難しいというイメージがあるかもしれないけど、ギャル電が伝えたいこととしては、とりあえず何でもいいから作ってみよう!というノリなんですよね。
ルーズソックスで発電するサスティナブルな進化系ギャル
――それでは作品について聞かせてください。まず「Wi-Fi盛れみざわサンバイザー」は、どんな発想から生まれたものなんですか?
まお これを作ったきっかけが技術面とノリの面の2つあるんですけど、技術的にはESP8266というWi-Fiモジュールが搭載されているボードがあって、個人でも開発しやすいボードなので、その紹介も兼ねて作りました。ノリ的には、みんなWi-Fiが強い場所に集まるので、ギャルからすると「Wi-Fiが盛れてる場所=イケてる場所」という結論に至って、ビカビカに光らせてみました。先進技術をムダに使ってる感じですね(笑)。
――「ルーズソックス発電機」も非常に面白いですね。最近はルーズソックスを見なくなりましたが、復活させたいという思いがある?
まお ギャルの伝説的ミームですよね。私もルーズソックスを履いてる人を見たことがなくて、映像の中でしか見たことがなかったんです。4年前に初めて履く機会があったんですけど、それがエモすぎて、足が細く見えてけっこう盛れるんですよね(笑)。そこからさらに盛ろうと思ってルーズソックスを光らせてみました。
発電させたきっかけとしては、以前、ロンドンのカムデンに遊びに行ったとき、90年代からあるサイバーゴスのお店を見ていたら、「Sex,Drug & Sustainability」と書かれたTシャツがあって、何も考えずにロックンロールしてる時代は終わった……って悟ったんですよね。今ある資源や環境を大事にしたり、みんなとシェアする考え方こそがかっこいいと思ってルーズソックスで発電してみました。その他にも、音を追加した「ルーズソックスシンセサイザー」という作品も作っていて、リスペクトを込めてルーズソックスの発展形を作るのが面白くなってきましたね。
――「音に反応して光るマスク」は、アフターコロナのパーティーシーンで流行りそうですね。
まお みんなマスクを付けるようになったので、音に反応させて光らせたら面白いんじゃない?という軽いノリで作ったんですけど、意外と反応が良かったんです。商品化をすすめられたりもしたんですけど、ブログで作り方を公開しているので、私的には商品化よりも「真似して作ってみた」という人がいた方がうれしい。私はオープンソースコミュニティのナレッジをシェアする文化にすごく恩恵を受けてきたので、自分なりにオープンソース文化に貢献していきたいと思ってるんですよね。
――「電子工作カルチャーをリアルストリートに広める研究」としては、YouTubeの動画配信やワークショップになりますか?
まお そうですね。大学で教育工学を学んでいて、楽しく学べるツールを開発したり、効率的に教えられる方法を工学的なアプローチで研究しているんですけど、私の研究テーマがワークショップなんです。コロナ過もあってオンラインの電子工作ワークショップをやっているんですけど、オンラインだと時間や場所の制約がなくなるので、そのぶん材料を買ったり電子工作の記事やブログを読む時間に使ってほしいと思ってますね。
――ギャルカルチャーの復興と、電子工作カルチャーを広めていくべく、最後にそれぞれメッセージをお願いします。
まお 若い頃はギャルだったけど、卒業したという人もけっこう多いと思うんです。でも、ギャルをやってきた人は、根源的にギャルマインドがあると思う。私はこれがかわいいと思うから身につけるとか、これがかわいいから作るっていう自分を信じて生きる強さは、ずっと続いていくと思うんですよ。そのマインドを大事にしてほしいし、私も日々大事にしていきたいです。
電子工作については、すごく作るのが簡単になってはきてるけど、やっぱり地道なんですよね。一つひとつ積み重ねて自分の手で作った回路やプログラミングが動くというだけで、電子工作をやっている人には大きな一歩なんです。周りの人が高度なものを作っているから自分もすごいものを作らなきゃって自信をなくす人もいるかもしれないけど、ひとつ言えるのは、みんな自分で作ったものが一番かっこいいと思ってるんですよ。たとえ汚くても不格好でも、あなたが自分で作って動かせたものは超イケてるんだぜ!ってことを伝えていきたいですね。
――本日はありがとうございました!
ギャル電まお information
■YouTube「ギャル電」チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCdy7DYQLk6BhKebhzAArhNw/featured
Text by 大寺明