インタビュー

【クリエイター奨学金(AI)「奨学生の声」】vol.8 彫刻 / 柴田まお

彫刻 / 柴田まお

クリエイター奨学金第6期生

1998年神奈川県生まれ。2022年多摩美術大学美術学部彫刻学科卒業。現在、東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻在籍。現代に於いて、多様化する「人と人の繋がり」や、その中で生まれる「コミュニケーションの在り方」をテーマに、フィジカルとデジタルを介した彫刻作品や、インスタレーションを制作する。

活動内容を教えてください

私は、現代社会において多様化する「人と人との繋がり」や、その中で生まれる「コミュニケーションの在り方」をテーマに、彫刻を軸にしたインスタレーション作品を制作しています。それは彫刻というフィジカルな表現に、現代の情報化社会の象徴であるデジタルな表現を掛け合わせることで、現実(リアル)と虚像(フェイク)の境目を曖昧にしていく表現であり、改めて、我々の生きる『今』をどう表現できるかを考えています。

『Blue mask』2023 by 摩美術大学 卒業制作展・大学院修了制作展2022

具体的には、青色の彫刻をクロマキー合成によって消す「Blue」シリーズや、フェイクグリーンを用いて迷彩のように作品を同化させる「camouflage」シリーズなどを中心に制作しています。そこで用いる素材は発泡ポリスチレンやブルーシート、印刷紙など伝統的な彫刻の素材ではなく、現代社会に溢れる建材や日用品を使用し、そこに映像や写真などデジタルの要素を掛け合わせた表現をしています。

『Camouflage Print』2023 by 六甲ミーツ・アート芸術散歩 2023 beyond

ここ1年間では、「多層世界とリアリティのよりどころ」/ NTT インターコミュニケーション・センター [ICC]、 個展「 RECONSIDER/ 考え直しなさい」/大阪 Marco gallery 、「六甲ミーツ・アート芸術散歩 2023 beyond」/ 兵庫 六甲山、などに参加し、今年1月には「第 72 回東京藝術大学・修了作品展」にて学生生活の集大成を発表しました。

『Blue』2023 by 多層世界とリアリティのよりどころ (NTT インターコミュニケーション・センター [ICC])

現在は「極寒芸術祭 2024」という-20℃にも到達する北海道弟子屈町の芸術祭に参加して、ここでしか作れない作品を滞在制作しています。今後も継続的に制作と発表を繰り返し、自身の表現の幅を広げていきたいです。

クリエイター奨学金に応募しようと思ったきっかけは?

コロナ禍になった時に、今までできていた制作や展示活動が一旦ストップしてしまい、大学にも行けない時期がありました。その状況を経験したことで、自分から動いて行かないとこのままでは芸術活動を続けて行けないのではないかと感じるようになり、その頃から外での展示を意識するようになりました。

ミッドタウンアワードや極寒芸術祭などに参加して展示と制作が軌道に乗っていく中で、それと同時に時間面と金銭面がひっ迫し始め、少しずつ余裕が持てなくなってしましました。そんな中でクマ財団の奨学金を知り、応募しました。奨学生になれたことで、多方面に余裕を持つことができ、自身の制作と研究に集中することができました。

『Blue tile』2023 by 東京ミッドタウン「Street Museum 2022」

また改めて振り返ると、クマ財団選考はもちろんですが、作家活動をする上でとても重要なのは、「プレゼンテーション」能力であると私は考えています。
在学中も主に学外での発表に力を入れていましたが、どの場においても自身の活動を伝える場面が多くありました。それは口頭やポートフォリオ、スライドでの公開発表です。

適切な資料制作、想定される質疑応答の解答、本番を意識した練習、などの入念な準備を行いました。
また、発表前の資料や文章は、本番前に多くの人に見てもらい、フィードバックを頂く事は大切なのではないかと考えています。より多くの人に目を通してもらうことで、プレゼンクオリティを上げることが私の作戦でした。

奨学金は何に使いましたか?

奨学金は主に、制作費、搬入出費、レジデンス中の滞在費などに使用しました。
彫刻は制作をするのにも材料費がかかる上、出来上がった作品に対しても移動に車両費や、手伝いの人件費などがかかるため、奨学金のほとんどを自身の活動にあてました。また制作だけでなく研修費として地方の展覧会を見に行ったり、制作に関わる研究資料を購入したりと最大限に活用しました。

『わらべうた』2023 by 北海道 弟子屈町「極寒芸術祭 2023 元遊郭美術館」

クリエイター奨学金に採択されて良かったことはありますか?


先にも書いた通り、多方面に余裕を持つことができたことで、自身の制作と研究に集中することができました。

またクリエイター奨学生による展覧会シリーズ「KUMA experiment」では同期の他分野の奨学生と一緒に、定期的に話し合いを続けて、一から展示会を作り上げました。展覧会を作る経験はその後の私の活動において大きな経験となりました。それはクリエイターが集まって主催して展示を行う難しさと楽しさを経験できたと同時に、展覧会の作り方を学んだことで、展覧会に参加することへの感謝と責任をそれまで以上に意識するようになりました。

『camouflage print』by KUMA experiment vol.2 「呼吸する距離」

また奨学生になれたことで生まれた奨学生同士の繋がりなど、その後の交友関係にも大きくな影響してとなっています。奨学生同士その後の活動を追い合う関係は、それぞれの表現を尊重し合いながら、学ぶことも多く、刺激となっています。

そして奨学生が終わった今も、活動や展示の告知をしていただけたり、定期的に活動を見てくれることも嬉しいです。これからも自身の活動を続けていくことで、奨学生経験者としてクマ貴財団に何かを還元して行けたらと思っています。

『Blue piece』2023 by LUMIX学生アンバサダー

最後に、応募者に一言!

この奨学金は、作家としての走り出しのきっかけであり、作家を目指すチケットを握らせてもらえることだと考えています。「作家として作り続けたい」という純粋な理由で応募したこの助成金でしたが、あの時の応募があったからこそ、今の私がいると思っています。
学生という立場だと、お金や機会に恵まれず、やりたい表現をなかなか実現できないことがあると思います。その中で、クマ財団のクリエイター奨学金は、大きなきっかけを与えてくれるのかもしれません。もちろん使い道は個人次第ですが、貴重な機会を最大限に利用して、挑戦できることは自ら踏み出し、学生のうちになるべく多くの経験をしていくべきだと私は考えています。

私もありがたいことに、これまで多くの経験を通して、学んだこと、嬉しいことが沢山増えました。しかし反面、悔しいこと悲しいことにもぶつかることが多いです。日々勉強です。これからも、より良いものを形に残せるよう、全力で、一生懸命自身の表現に向き合おうと思います。そしてこれからも初心を忘れず、ひとつひとつ丁寧に精進していきます。

また奨学生なったことで生まれたつながりも自身の活動に生きてきています。偶然知り合った他分野のクリエイターが、実はクマ財団の奨学生だったという経験も多く、横だけでなく縦の繋がりがあるのもクマ財団の魅力です。その繋がりや出会いを通して、刺激し合うことでクリエイター同士切磋琢磨して行けたらと思います。

皆様も採択されたら、是非クマ財団の繋がりを広げていってください。そして私と出会ったら、その皆様の繋がりの中にいれてもらえたら嬉しいです。
表現の場で、皆様に出会えることを楽しみにしています。お互い頑張っていきましょう。

『Blue pledge』2024 by 第 72 回東京藝術大学・修了作品展


「クリエイター奨学金(AI)」第8期生の応募締め切りは
2024年3月24日(日) 23:59まで!
詳細は以下をご確認ください。

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