レポート
春原 直人さんによる、石本正日本画大賞展レポート
こんにちは、クマ財団事務局の桐田です。
全国にはさまざまなアートイベントや作品展がありますが、島根県浜田市の石正美術館で開催されている「石本正日本画大賞展」では、年に一度、日本画を修める大学から推薦された学生作品が一堂に展示されます。
第4回の今年、クマ財団2期生の春原 直人さんがこちらの大賞展にて奨励賞を受賞されました。ご本人より素敵な写真と一緒に大賞展レポートをいただきましたので、許可を得て、こちらに掲載させていただきます。
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石本正日本画大賞展にて奨励賞をいただいたご縁で、島根の実際の展示を見に行ってきました。
当日の島根は快晴でしたが、台風の爪痕なのか少し海は荒れていました。
空港から車で30分程の所に石正美術館がありました。見晴らしの良い丘の上という感じで静かな場所で、教会を彷彿とさせる建物には大きな木が植えられており、木漏れ日と葉の音だけが聞こえるそこは正しく聖地のような場所でした。
館内に入っていくと奥の展示室へ続く通路があり、そこには僕と同じく全国から集められた日本画が並んでおり、そこを暫く進むと展示室が現れます。中に入って他の作品を鑑賞していると一際漆黒の作品がありました。半ば浮いているといってもいいようなその作品が僕の作品でした。
作品が制作している時と展示してから印象が違うというのはよくあることです。それは他の作品と空間の関係性と、作者の手から離れていた内に、僕の中の原印象が別の何かへ昇華されたと言えるかもしれません。そうして作品はどんどん遠くへいってしまいます。しかし、僕はそれに導かれるように新たな「出会い」に巡り会うのです。
今回の受賞作品の「連」は内部と外部の関係性に着目して制作しました。山形ビエンナーレの作品と同時並行で制作していたので関連する部分も多く、回収できた反省点も多かったです。今作も山をテーマにしています。自分と山との間には何があり、そしてそれを見たときに自分自身の内部では何が起きているのかを、実体を持たない曖昧な画面で、過程も含めた痕跡の絵画として表現しました。
作品を見た人が何を想い、感じたかはわかりません。しかし、漆黒の曖昧な画面と向き合ったなかで評価していただき奨励賞を受賞できたことは大変ありがたいことですし、自分のこれまでとこれからを裏付ける貴重な体験でした。
Writing and Photo by 春原 直人