KUMA FOUNDATION クマ財団

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クリエイター奨学金は、学生クリエイターの育成を目的とした、給付型奨学金です。

ニュース

Meta Flower2021.01.29

ハードコア(=本来の姿)を美術にもラップにもぶつけていきたい。〜4期生インタビュー Vol.29 Meta Flower〜

クマ財団が支援する学生クリエイターたち。
彼らはどんなコンセプトやメッセージを持って創作活動に打ち込んでいるのか。
今という時代に新たな表現でアプローチする彼らの想いをお届けします。

>>> 4期生のインタビューについての記事はこちらから。
4期生41名のインタビュー、始めます!

 

 

Meta Flower

1994年神奈川県生まれ。
東京藝術大学 彫刻科修士1年在籍。
ラッパー、彫刻家。

18歳の頃からヒップホップクルー「LSBOYZ」で活動し、2020年1月にMeta Flower名義でEP『DADA』をリリース。
2020年12月に1stアルバム『LSBOYZ』をリリース。
彫刻では言語にならない存在を研究している。
両表現共に『人生』や『人間関係』をテーマとする。

https://kuma-foundation.org/student/meta-flower/

 

 

イスラエルを旅して吹っきれた。そこからが真のスタート

 

――ラッパー、彫刻家ということですが、藝大生のラッパーというのも異色だし、ラップシーンで現役美大生というのも異色ですよね。自分の軸足についてはどう考えていますか?

 

Meta 大学に入るより音楽の方が先だったんです。僕は藤沢の生まれなんですけど、高校生のときに音楽をやりたいとなったとき、周りのヤンチャしてる友達がみんなラップを聴いていて、街にラップしかないような環境だったんですよね。

高校を辞めて通信制高校に編入したとき、自分に何もなくなってしまったような感覚があったんです。高校に行かなくなってからグラフィティをやっていて、夜中11時くらいに家を出て朝帰りという生活を送っていたんですが、「そんなに美術が好きなら一回真剣にやってみなさい」という話になって、高校の先生から美術予備校を紹介していただいたんです。そこで「おまえみたいなボンクラは彫刻をやれ」と言われまして(笑)。

――エネルギーを持て余していたのが、美術という目標を見つけたわけですね。

 

Meta 予備校で彫刻を教えてくれた先生がヒッピーっぽい先生で、ヒップホップにも詳しくてラップについて教えてくれたり、アトリエに連れて行ってくれたりしたんですよね。自分はサラリーマンに向いてないと感じていたので、彫刻の仕事じゃない感じとか、先生のラフなライフスタイルに影響を受けて、それから美術に真面目に取り組むようになったんです。

「Menace to society 」cube head(左)とcube(右)

 

――一方のラップの活動はどんな感じでしたか?

 

Meta 予備校時代はやってなかったです。地元の先輩とトラブルになったことで神奈川のクラブに出入りしづらくなって、東京に出て遊ぶようになっていましたね。大学に入ってから地元の友達とLSBOYZというグループを組むことになったんですが、リーダーが遠くに行くことになったんです。彼が帰ってくるまでに東京のラップシーンに土台を作ろうという話になって、「おまえもラップをやれ」と半強制的にラップをやることになったのがきっかけでした。だけど、曲やPVをリリースするわけでもなく、ずっと趣味のような感じでしたね。

LSBOYZ。

 

――そうすると大学の学部時代は彫刻の方が中心だった?

 

Meta それが大学に入ってから彫刻からも少し離れてしまったんですよね。コミュニティーの人間関係で評価されるような彫刻界の縮図が見えてきて、大学に面白味を感じなくなってしまったんです。それで外に出て遊ぶようになって、大学2、3年の頃は、生活に支障が出るくらい酒を浴びるように飲んでいて、半アル中の状態でした(苦笑)。精神的にヤラれてる時期が2~3年続いたんですけど、自分でも何だったのかわからない。今思えば、ヒップホップ界隈の悪い大人をいっぱい見すぎて、自分の中の正義感みたいなものが壊れだしていたような気がしますね。

 

――暗黒期があったわけですか。そこから抜け出すきっかけがあったんですか?

 

Meta 変わったきっかけは、イスラエルに旅行したことでした。藝大の友達がイスラエルに留学していて、分離壁や宗教紛争に興味があったので行くことにしたんです。パレスチナに行った後、死海に行って一日ダラダラと死海の水辺を眺めながら考え事をしていたとき、なんか吹っきれた感じがしたんですよね。

僕は彫刻家というのは生命力を創る仕事だと思っていて、生命力には敏感なつもりなんですが、死海は生命体が一切いない湖なんですよね。それが三途の川に来てしまったように感じられて、インスタントな解脱をしたような感じでした。それまでは自分を責めることが多かったんですけど、“これでいいんだ”と吹っきれて、しっかりやろうと思えるようになったんです。

イスラエルにて。人生における気づきを得て、迷いのない活動のきっかけとなったという。

 

――吹っきれたことで創作活動も変わった?

 

Meta 一気に切り替わりましたね。イスラエルの後、ヨルダンからギリシャに行ったんですが、経済危機後の貧困問題を抱えていることもあって、ギリシャはアンダーグラウンドカルチャーがすごく育っていたんです。アテネで声をかけてトラックの音源を作っている人の家まで連れて行ってもらったんですが、そこで音源を10曲くらいもらって、トルコで合流することになっていたラッパーの友達に送ったんです。トルコは3日間だけの滞在だったんですが、着いたその日にレコーディングして、2日目と3日目でPVを撮ったんです。あそこから僕のラップのキャリアはスタートしたと思います。

 

 

 

ラップと彫刻をできるだけ近づけていく表現を模索

 

――「DAMEGED PROJECT pt.2」は私小説的なリリックですが、どんなメッセージが込められていますか?

 

Meta あの曲に登場する兄弟が僕にヒップホップを教えてくれた兄弟なんですが、二十歳の頃、彼らの父親が失踪して二人ともおかしくなっていた時期があったんです。寄り添ってあげられる人が僕しかいないという状況を曲にしたものなんですが、その兄弟の弟の話が「DOOM FRIENDS」という曲にも入っていて、つながっているんですよね。

そもそもラッパーは、地元でグループを結成したり、昔の友達付き合いが今だに続いているというグループがどこの国でも多いものなので、どんなことがあっても最初の仲間を信用して続けていくということをテーマにしたかった。セールスに走って昔からの仲間を切り捨てるやつがいたり、インターネットでやりとりして簡単に音楽が作れるようになったけど、、僕はそういう風潮が気に食わなくて、スタートしたときの仲間と最後まで一緒にやり続けることが、ヒップホップのスタンスとして重要だと思っているんです。

 

――昨年12月にLSBOYZの1stアルバムがリリースされましたが、今後はラッパーの活動を中心に考えている?

 

Meta 僕はラッパーとして続けていくというより、彫刻家として表現活動を続けていきたいと思っているんです。もともと美術のアーティストとしてラップがバックグラウンドになればいいくらいに考えていたんですけど、思った以上にラップの活動も真剣にできているので、二足のわらじでやっていくのか、すごく悩みました。結論が出たわけじゃないけど、学部の卒業制作を創ったとき、できるだけラップと彫刻を近づけるという表現をやっていこうと思ったんですよね。

 

――たしかに卒業制作の『追憶』は、文字が表現されていてラップの要素を感じますね。

 

Meta あれは自分のリリックを彫ったものなんです。彫刻というと、木対自分とか石対自分というふうに素材と対峙して創っていくものですけど、そうした彫刻のスタイルをいかに壊すかを考えて制作方法にこだわりました。まず粘土で文字を彫って、そこにウレタンを流し込んで型を取る陰刻彫刻なんですが、この方法なら僕の中から湧き出てくるものになるので、最初から作品の側に自分がいられることに気づいたんです。

この制作方法は、僕のラップの作り方とも似ています。粘土は取って付けてということができるわけですけど、それと同じように僕はラップで歌詞を作るとき、練りに練ってリリース直前まで書き直したりするんですよね。

「追憶」東京藝術大学学部修了作品。

 

――ラッパー・彫刻家として、今のアートシーンにに言いたいことは?

 

Meta 美術界に対しては、変えたいことはかなりあります。たとえばグラフィティでいうと、日本では大山エンリコイサムと村上隆がグラフィティをアートとして盛り上げたという文脈がありますよね。それがお金になると気づいたコレクターが集まってきたことで、グラフィティ本来の良さが失われていったと思うんです。本来グラフィティは、ただのチームの縄張り争いからスタートしてだんだんクオリティを上げていったものだったのが、アートとして捉えられるようになったことで、本来の姿がアンダーグラウンドだと言われてしまう。だけど僕は、反社会的行為であることがグラフィティ本来の良さだと思うんです。

ラップもそうだけど、世の中に対してアクションできることが良さだったのに、どんどん新しい人が入ってきて飽和状態になったことで本来の姿が埋もれていって、ハードコアとかアンダーグラウンドという言われ方をされるのが、すごく気に食わない。僕はハードコア(=本来の姿)というものを、とにかく美術にぶつけていきたい。何がハードコアの核なのかは常に考え続けなきゃいけないと思ってます。

 

――最後にメッセージをお願いします。

 

Meta 困っているんだったら僕に会いに来てください。僕は待っています。

新型コロナウィルス感染防止のため、オンラインにて取材。

 

 

Meta Flower information

■1stアルバム『LSBOYZ』絶賛発売中
2020年12月2日リリース/WD sounds
https://lsboyz.stores.jp/

 

■EP『DADA』絶賛発売中
2020年1月26日リリース/Meta Flower
https://linkco.re/r4my7P8A

 

 

Text by 大寺明