インタビュー

【クリエイター奨学金(AI)「奨学生の声」】vol.1 音楽 / 増田 義基

音楽 / 増田 義基

クリエイター奨学金第2期生

作曲家・サウンドデザイナー。1996年生。東京藝術大学音楽環境創造科卒。プログラミングによる音響合成や空間音響システムの設計、映像・舞台・インスタレーション作品への作曲やサウンドデザインの手法を学び独立。2022年9月にアルバム「ビオトープ探して」をリリース。合奏集団「かさねぎリストバンド」主宰。

活動内容を教えてください

増田 義基(以下、増田):音を聴くこと・音を作ることを軸に、色々な領域で制作活動をしています。
大学でコンピューターを用いた空間音響の制作や音響合成を実装する技術と、映像などの様々なメディアに対する音響制作手法を学んだ後、フリーランスで作曲や音響関係の仕事を受託しながら自作品の創作活動をしています。

増田:2023年にはクマ財団の活動支援事業に採択してもらい、『音楽ライブ「ビオトープ探して」』の発表とクマ財団ギャラリーでの展示パフォーマンスを行いました。
音楽以外での活動では、『卓球型演奏装置「とてもとても大きな音の鳴らせるピンポン」』の展示、トランプゲームやスイカ割りの音を環境音として録音するフィールドレコーディングの創作も行っています。

仕事をきっかけに映像作品や舞台作品・インスタレーション等の共同制作に発展することも多いです。自分が関わる領域は音楽、映像、舞台、美術、エンタメ、広告など、大切にしている美学や価値観がまるで違うので、それぞれにおける音の在り方を考えたり提案したりしながら色々なジャンルの制作に参加しています。

クリエイター奨学金に採用いただいた時は集団合奏「かさねぎリストバンド」のプロジェクトを始めたタイミングだったので「音楽」のジャンルで載っています。

クリエイター奨学金に応募しようと思ったきっかけは?

増田:奨学金を知ったきっかけは学内に張り込まれていたポスターでした。実は1期の時は応募したものの落選し、その後1期で採択された大学の同級生や助成金をきっかけに知り合った1期生の方の制作を手伝うなどした後、再度2期の募集時に応募し、採択いただきました。

もう5年以上前のことなのでうろ覚えですが、1期を応募した際はまだ自分ひとりだけで制作した作品というのが少なく、他の人と共同制作での演劇や映像、インスタレーションに関わることが多かったです。そのため応募の際のポートフォリオや企画書でも自分が行っているオリジナルの創作の部分を表明したり言語化することができておらず、どのように今後やっていくのか(作家として自立するのか、就職するのか、大学院に行くのか、とか)を悩んで、落選の後で大学も休学した覚えがあります。

そこから一年経って2期に応募した際は、前述の「かさねぎリストバンド」を始めた後のタイミングで、それまでしてこなかった「自分が一人でコンピューターで作った音楽を誰かに演奏してもらう」ということを軸に、演劇的な制作手法での集団合奏の作曲をやってみたいと思っていたので、そのプロジェクトの実現をベースに企画して応募したと思います。
10名程度での集団合奏の制作はお金が必要で、当時の学生の状態では財政的に実現が難しかった部分があったので応募を検討しました。

奨学金は何に使いましたか?

増田:主な使途は「人件費・交通費」「練習のためのレンタルスタジオ費」「ライブパフォーマンスの会場利用費」「活動のアーカイブパックの制作」です。毎月10万円ずついただく助成金をなるべく貯めつつまとめて使いました。一部は生活費や制作のための機材購入にも使いました。

奨学生当時の「かさねぎリストバンド」の活動風景

増田:通常、バンドやアンサンブルが何かを作って発表するというのは、そもそも同じ音楽的な指向を持つ人同士が仲良くなったりして自発的に集まるので、人件費などの経費は各々持ち出しで活動するケースが多いかなと思います。
ただその時作りたいと思っていた音楽は、むしろ普段あまり交わらないジャンル(演劇、身体表現、音楽等)の人を集め、簡単な反復構造を元に演劇的な朗読や即興の要素を取り入れて作るものでした。
そのため、音楽のジャンルは「オルタナティブ」というくくりで、プロジェクトはパフォーマンスや演劇の公演に近いものとなりました。その作り方では出演者それぞれの専門性とはやや異なる関わり方も含む形でプロジェクトに参加してもらう時間を確保してもらう必要があったため、人件費や経費はしっかり払いたいと思っていました

その影響もあって、最終的に成果物として制作した「アーカイブパック」も音楽としては王道なCDのリリースではなく、デザイナーの方に相談に乗ってもらいながら、ZINEを意識した真空パックでのリリースを行いました。

当時制作したアーカイブパック。折ポスター、ZINE、ステッカーが真空パックに封入されていて、QRコードを読み込むことで音楽アルバムを視聴できる

デザイン:根本匠、片岡真優 イラスト:ニメイ(撮影:野口羊)

クリエイター奨学金に採択されて良かったことはありますか?

増田:まず奨学金があったことで、ひとりの学生が主宰するにしては大きめの規模の発表ができたことと、作品の制作時間の確保やパフォーマンスに参加してもらう演者の方々との関係性においても充分な余裕が生まれて、自分の行っている活動をしっかりと考えながら進めることができました
芸術系の一般的な助成金では後払いが原則で立替なければならないことや使途用途が明確であること、最終的に利益が出てはいけないこと等の厳しいルールが敷かれているため、これらの制限が一切無いことが大変ありがたかったです。国内でもこれに類する助成金はあまり見かけません。

それと、年を通じて2〜3回ほど奨学生全体で会う機会があるのですが、大学とはまた違って様々なジャンルで真摯に取り組んでいる方々を知ることのできる良い場でした。芸術のみならずサイエンスや人道活動、ジャーナリズム等採択ジャンルが幅広いので、沢山の未知の人と出会います。そこから仲良くなれる人もいれば、特段交わらない人もいますが、とにかく自分が全く知らない領域がたくさんあって、そこで熱心に研究している同年代がたくさんいることが分かるのはとても大事でした。

2期奨学金を受けていた年度の最後、KUMA EXHIBITION出演時と同じメンバーで演奏した際の写真(撮影:三野新)

最後に、応募者に一言!

増田:主に表現系の方に向けて。
最近は大学でどうかも分かりませんが、芸術や表現の世界ではしばしば表現領域ごとの文脈の力、歴史的な権威性が強く、内輪に浸透した不文律として「これは良いよね」「なんか良いよね」という言葉が悪いパワーを持ってしまう場面があるように感じます。
クリエイター奨学金の選考では、社会一般におけるプレゼン力だったり、起業家やスタートアップ企業に通づるような「誰にも真似できない独創的なことを、社会に対して分かりやすく説明する」能力が求められるように感じました。面接を含め審査員の大大人(おお・おとな)からの言葉はとても参考になります。面接を受けるだけでも非常に勉強になるので、ぜひ応募してみてください。
また、AIの利用について。実際に社会で生成AIが使われる場面を見ると、それが良い表現になるか、ありきたりな焼き回しになるかは、使い手の美学に大きく依存する印象があります。
ものづくりの作り手として没頭する数年間を持つことで、自分だけの強い美学の芯を作れると思います。その経験は変化が大きい社会の中でもきっと助けになります。

 


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2024年3月24日(日) 23:59まで!
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