インタビュー
【クリエイター奨学金(AI)「奨学生の声」】vol.4 VR/AR/MR/xR / ばいそん
クリエイター奨学金第4・5期生
1995年生まれ。九州大学芸術工学部 首席卒。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)卒業。総務省異能vation 異能β認定。
からだをコピペして遊ぶARアプリケーション《ARama!》の開発を起点とし、XR領域における「遊び」と「デザイン」を探求する。まともなプロフィール写真はまだない。
活動内容を教えてください
個人では、XRアプリ作家として、XR領域における「遊び」「デザイン」の実践を行っています。奨学生のころから開発を行っているアプリとして「からだをコピペして遊ぶARカメラ《ARama!》」があります。身の回りの人のからだをコピペし、宙に浮かせたり、壁にめり込ませたりして、合成映像のような不思議なシーンを目の前に構築して遊ぶARカメラアプリです。
また、普段は株式会社サイバーエージェントにてXRエンジニアとして働いており、バーチャルプロダクションスタジオにおける撮影効率化ツールの制作などの業務に従事しています。
クリエイター奨学金に応募しようと思ったきっかけは?
なにより、年額120万円の奨学金自体がとても魅力的でした(笑)。学生としてモノを作るにあたって、どうしても金銭的な面で制限がかかることは、当時ずっと悩んでいたことでした。探してみると「給付型の奨学金」というのは世の中にそれなりにありましたが、どれも学術的な研究成果が求められます。一方でクリエイター奨学金は、「合宿 + 金銭的な支援 + 成果物の展示機会」という、「モノを作る学生」に特化したプログラムになっており、支援を受けながら気兼ねなく制作が行える体制が大変魅力的で、「これこれ!ほしかったやつ!」となりました。
また、「様々なジャンルの実践者が集まる場」というカオスな感じに惹かれたという理由もあります。私の専門である「XR」は、メディア技術としてまだ未成熟なので、「どの分野と掛け合わせるか」というチャレンジの余地がたくさん残っています。クマ財団のような文理の垣根なく領域横断的に交流できる場に身を置くことで、自分の作品に新たな展開が生じるんじゃないか、他の学生との化学反応が起きるんじゃないか、というワクワク感がありました。
奨学金は何に使いましたか?
生活費と開発用デバイス購入費に充てました。
開発に使用するPCを購入したり、動作確認用やデモ展示用にいろいろなモデルのiPhone、iPadやXRデバイスを購入したりできたことで、日頃の制作がとてもスムーズに進みました。奨学金を生活費の足しにできたおかげでバイトをする必要はなくなり、制作時間を多く取ることができたのも大きなメリットでした。
クリエイター奨学金に採択されて良かったことはありますか?
私が採択していただいた4・5期のタイミングはコロナ禍真っ只中ということもあり、合宿などの交流イベントが従来通り行われなかったのが残念でしたが、どちらの年も成果発表展示では、同期の学生や足を運んでくださった鑑賞者の方々と深く交流することができました。
私の展示作品《ARama!》では、「人の作品を被写体にして遊ぶ」という(ちょっと失礼な)ことができたため、展示の合間を見て他作品のところでそういう遊びを積極的に行っていたのですが、作家の学生もだいたい喜びながら遊びに参加してくれたのが印象的でした。おかげでお互いの作品についてラフに話して打ち解ける機会となり、「これ(ARama!)作っておいてよかった〜!」と思いました。
5期のタイミングでは、同じく継続採択されたアニメーション作家の高橋美帆さんとのコラボが実現しました。「切って貼って再構成する」という高橋さんの「切り絵アニメーション」におけるプロセスと、「からだをコピペしてシーンを構成する」という私の作品のコンセプトに親和性を感じ、私からコラボをお願いした形になります。
また、東海地方在住の学生を中心に、FabCafe Nagoya様協力のもと自主企画グループ展を行ったこともありました。コロナ禍の制作・鑑賞・コミュニケーションにおける閉塞感を、学生作家たちなりのやり方で打破してみたい、という試みでした。
4・5期を通し、コロナ禍というイレギュラーな状況下で「作る」ことと「見せる」ことの両方に真剣に向き合えたのはとてもいい経験だったと思いますし、その困難な時期をともに乗り越え意気投合し、今なお交流が続いている友人が多くできたのも、大変ありがたいことだと感じています。
最後に、応募者に一言!
クマ財団は、技術系から美術系まで様々なジャンルの「モノを作る」学生が集まる場ですが、8期生の募集を機に「クリエイター奨学金(AI)」へと名前が変わることで、今後は「モノを作る」ことに加えて「AI」も奨学生間の共通のトピックになっていくのだろうな、と感じています。
「誰にとって、AIのどこが価値となり、どこが脅威となるのか」
「○○なAI技術は作っていいのか、使っていいのか」
技術系と美術系の学生間でそのような対話や議論を重ねながら、最終的に各々にとって納得感のある「人とAIの共創の形」が生み出されることを、OBとして勝手に願っています。(楽しそうなのでできれば混ぜてほしい。)
ちなみに。
「応募しようかな〜どうしようかな〜」とか悩んでいる人は、腹をくくって応募してしまいましょう!
仮に落ちてしまっても、得るものが必ずあるので心配ご無用です。実は私も、過去に惨敗(書類落ち)したことがあります。
評価を受け止め、自分の作品を相対化し、社会との向き合い方を微調整しながら、何回でも挑戦してみてください。その先にきっと、モノづくりに没頭できる濃ゆ〜い1年(あるいはn年)が待っているはずです。
応援しています。とことん、がんばって!