KUMA FOUNDATION クマ財団

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クリエイター奨学金は、学生クリエイターの育成を目的とした、給付型奨学金です。

ニュース

高橋 美帆2020.10.12

切り紙アニメーションの幻想的世界に滲み出る「死生観」がテーマ。〜4期生インタビュー Vol.8 高橋美帆さん〜

クマ財団が支援する学生クリエイターたち。
彼らはどんなコンセプトやメッセージを持って創作活動に打ち込んでいるのか。
今という時代に新たな表現でアプローチする彼らの想いをお届けします。

>>> 4期生のインタビューについての記事はこちらから。
4期生41名のインタビュー、始めます!

 

 

高橋 美帆

 

1997年東京都生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科に在学。
アニメーション作家の野村辰寿教授よりアニメーション制作の指導を受け、切り紙アニメーションなどの映像作品を制作。
作品のコンセプトによってビジュアルを変えつつも、生き物をモチーフとすることが多く、死生観をテーマとした作品を制作している。

https://kuma-foundation.org/student/miho-takahashi/

 

 

 

昔ながらの切り紙の手法をデジタルで進化させる

――切り紙アニメーションならではの温かみや手触りが感じられ、とても自主制作とは思えないレベルの作品を制作されていますが、アニメーション制作をするようになったきっかけを教えてください。

 

高橋 子供の頃から絵を描くのは好きでしたが、多摩美に入学してみると、すごい才能をお持ちの方ばかりで、とてもかなわない……と感じたんです。私はどうしたらいいのだろう?と考えていたところ、グラフィックデザイン学科では全員がアニメーションを一回は制作してみることになっていて、2年次にアニメーションを初めて制作しました。

才能でかなわないなら努力量でカバーするしかない。そう考えていた私にとって、地道な作業が結果に出るアニメーション制作は、自分に合った手法だと思えました。いつもすがりつくような思いで制作しています。

 

――根気がいるアニメ制作の中でも、さらに手間のかかる切り紙アニメーションを選んだのは、何か影響があったのでしょうか?

 

高橋 多摩美でアニメーション制作を指導している野村辰寿先生が、アニメーション作家として著名な方で、絵によるアニメーションだけでなく、粘土を使ったコマ撮りアニメーションや切り紙アニメーションも手掛けていて、生徒に手作りや手描きの表現を推奨していたんです。野村先生の作品を通して、手作りの作品が持つ特有の動きや偶然性を感じ、切り紙アニメーションに挑戦してみようと思いました。

ビジュアル面では、フランスのアニメーション監督・ミッシェル・オスロさんにも影響を受けています。特に装飾的な絵作りを参考にさせていただいています。

 

――初作品『よんでよばれて』は2分14秒の短編ですが、膨大な時間がかかっているのではないかと想像します。制作はやはり大変でしたか?

 

高橋 コンテを考える時間や悩んで作り直したりする時間も含めると5カ月くらいかかっています。最初にイメージビジュアルを作り、野村先生の指導を仰ぎながら徐々に作っていくんですが、なぜか私の中にコマ撮りをするという発想がなくて、最初の作品はキャラクターの動きをスキャンして作っていたんですよね。

切り紙を糊付けした紙を少しずつ動かしながら一枚一枚スキャンしていて、要はコマ撮りとそこまで変わらないんですけど、手間のかかることをしてました(苦笑)。

アニメーション制作で使用する切り紙。高橋さんのポートフォリオより抜粋。

 

――デジタルとアナログの両方の手法を取り入れているそうですが、それぞれのメリットや良さはどんなところにあると思いますか?

 

高橋 アナログの方は、昔から続く切り紙アニメーションならではの味や温かみが滲み出てくることだと思います。私が表現したい世界観と、それを切り紙で表現することに直接的な関係はないのですが、野村先生に「切り紙(アナログ)の手法がアニメーションの動きをより良くする」と教えていただいたこともあり、プラスαの要素として切り紙で制作しています。

デジタルの方は、作業効率の面が大きいです。切り紙のパーツ自体は大きさを変えることができないので、一旦それをPCに取り込んで、大きさを調節したり、背景に組み合わせたりしています。私はまだ経験も浅く、将来的にも巨匠のような作品は創れませんが、デジタルを駆使することで、自分の技量を補いつつ自分のアニメーションとして確立させられるのではないかと思っています。

 

 

 

生き物の生と死に、「時間が迫ってくる感覚」を想う

 

――動物の世界がモチーフになっていますが、そこに込められたテーマやメッセージを教えてください。

 

高橋 メッセージはあまり意識したことがないんですが、野村先生から「死生観がある」とお言葉をいただいたことがあります。そのため、私の作品を客観的に象徴する言葉として、「死生観がテーマ」としています。

なぜ作品に死生観が滲み出てしまうのかを考えてみると、私は子供の頃に生き物を死なせてしまったことが何度もあったんです。たとえば屋台の金魚すくいで取ってきた金魚の飼い方がわからず全部死なせてしまったりして、生き物の死がすごく心に残っているんですよね。そうした幼少期の記憶が積み重なって作品に反映されているんじゃないかと思います。

 

――『よんでよばれて』は動物の捕食を描いていますが、残酷なイメージではなく、寓話的世界観や自然の躍動感を感じさせます。どういったイメージなんでしょうか?

 

高橋 自然界の捕食行動は、捕食者と非捕食者の必然的で運命的な出会いなんじゃないかというイメージを持っています。そうしたことが日常的に起きていることに私は自然の神秘を感じます。動物ドキュメンタリーで淡々と映し出される捕食の映像でも、そこには感動的な何かがあるんじゃないかと。そうした命の神秘を表現するには、ドキュメンタリー映像ではなく、アニメーションの方がうまく作用するんじゃないかと思っています。

 

――次作『燃える時間』は一転してモノクロ調ですね。この作品で表現しようとしたことは?

 

高橋 この作品は、木ひとつとっても、葉っぱが動物の爪でできていたり幹が動物の足でできていて、画面にある全てのものが動物のパーツからできています。そうすることで世界全体が、動物の幽霊でできている死後の世界というイメージを表現しています。

「燃える時間」におけるキャラクターデザイン。高橋さんのポートフォリオより抜粋。

 

――炎だけが鮮やかな色を放っていて印象的です。

 

高橋 生き物が寿命で死ぬということに関して、私は時間が迫ってくる感覚を持っているんです。「命の灯火」という言葉があるように、ろうそくの火が時間とともに迫ってくることが死というものだと捉えていて、死と炎の表現は、私の中でかなり近いものなんです。

私が創作活動を始めたきっかけも、時間が迫ってくる感覚と関係します。自分の作品創りのスピートと自分が創りたい量、それを自分の寿命と比べたとき、圧倒的に寿命が足りません。それで焦って課題ではない自分の作品創りを始めました。

 

――現在、制作中の作品と、今後、目指すことを教えてください。

 

高橋 卒業制作として、ペットと自然界の動物の両方を出演させ、2匹の関係性を描く作品を制作しています。5分ほどの作品を計画しているのですが、今までよりも長い制作期間になるので、私一人では同じペースで走り続けられる自信がないこともあって、クマ財団からの奨学金を使ってアルバイトの方をお願いしています。

コンテを作りながら一部の動きの検証を一緒に作っているのですが、作業分担の面だけでなく、お互いに意見を出し合うことで、より良い動きを発見することもでき、本当に助かってます。アルバイトの方は全員アニメに興味がありつつも、作ったことがない方々です。今回の私の作品を通して「初めてアニメを作ることができた」と感想をいただいたこともあり、小さな体験ではありますが、本当にこのお金の使い方を選んで良かったと感じています。

今後は、よりクオリティを上げていきます。手作業の感覚を残しながらも、将来的には3DやVRを積極的に取り入れて、より世界の広がりを表現していきます。

 

――本日はありがとうございました!

新型コロナウィルス感染防止のため、オンラインにて取材。写真は作業風景。

 

高橋美帆information

 新作『In full bloom』作品上映(予定)

2021年2~4月に開催される予定の多摩美術大学の卒業制作展で作品上映を予定しています。

 

Text by 大寺明